
0~2歳ママパパに聞いた「予防接種」に関する調査
監修
左 信哲先生大阪市立大学大学院医学研究科/発達小児医学
昨年10月大阪市立大学大学院医学研究科/発達小児医学の左先生の監修のもと、「予防接種」に関するアンケートを実施しました。今回はその結果を発表いたします。
0~2歳のママパパに予防接種の接種状況や、受けとめ方・考え方を伺いました。また2019年に実施した同調査との比較もしています。2019年の調査結果はこちらからご覧いただけます→

調査概要
- 調査期間:2020年10月1日~10月20日
- 調査方法:インターネット調査
- 有効回答数:690
**回答比率(%)は小数点以下第二位を四捨五入しているため、合計が100%にならないことがあります。
*複数回答の質問については、回答比率の合計が100%を超える場合があります。
予防接種に対するママパパの印象は?

赤ちゃんの予防接種に対する印象を690名のママパパに伺うと、「とてもポジティブな印象」「ややポジティブな印象」と回答したかたが合わせて75%近くにのぼりました。4人のうち3人のママパパが予防接種を肯定的に捉えているようです。
2019年に同じ調査をしたときは、「とてもポジティブな印象」「ややポジティブな印象」と回答した方の合計は57.8%でしたので、新型コロナウイルスの流行の影響もあるのか、予防接種に対する印象が向上しているママパパが多いようです。
予防接種に関する理解度を調査
ロタウイルス[任意接種・有料]に対する回答

赤ちゃんの予防接種には定期・無料のもの、任意・有料のものそれぞれたくさんの種類があります。各予防接種の「効果・意味・リスク」についてどのくらい知っているか、
ほぼすべて理解している/だいたい理解している/どちらともいえない/あまり理解していない/ほとんど理解していない
の5段階で聞いてみました。
以下の10種類の予防接種について聞いています。
・Hib(ヒブ) [定期接種・無料]
・小児用肺炎球菌 [定期接種・無料]
・B型肝炎 [定期接種・無料]
・4種混合 [定期接種・無料]
・BCG [定期接種・無料]
・MR(麻しん・風疹) [定期接種・無料]
・水ぼうそう [定期接種・無料]
・ロタウイルス [任意接種・有料]
・おたふく風邪 [任意接種・有料]
・インフルエンザ [任意接種・有料]
全10種類に関し、おおまかに7割前後のかたが「ほぼすべて理解している」「だいたい理解している」と回答しました。「理解している」かたの割合が高かったのはロタウイルスとインフルエンザ、若干低めはBCGでした。
2019年の調査では「ほぼすべて理解している」「だいたい理解している」の合計は5~6割でしたので、やはり今回の調査のほうが予防接種に関する理解も高まっていると言えそうです。
実際に予防接種は打つ?打たない?
(あるいは実際に打ちましたか)

実際に予防接種をどうする予定か(実際にどうしたか)との問いでは、85%以上のパパママが「任意(有料)を含め幅広く打つ(予定)」と回答しました。前回調査では「任意(有料)を含め幅広く打つ(予定)」と回答したかたは68.0%でしたので、こちらも大幅に予防接種に対する意識が向上したと言えそうです。
お医者さんに聞いてみたい!赤ちゃんの予防接種の疑問
アンケートに回答いただいたママパパに、赤ちゃんの予防接種に関する疑問や質問も聞いてみました。一部をご紹介します。
初めて予防接種する時は不安で仕方ないので、打った後どう様子を見ていいのか詳しく教えてほしい
うちの子は持病持ちなので、一般的な説明と同じ考え方でよいかどうか不安です
予防接種する前に、打とうと思っていた病気に罹患してしまった場合、予防接種はもう不要?
本アンケートにご協力いただいた690名のみなさまへ
アンケートにご協力いただいた0~2歳のお子さん(当時)のママパパのみなさま、改めましてご回答ありがとうございました。2019年調査から2年連続で回答いただいたかたも多数いらっしゃいます。本アンケートの回答は、個人が特定できない形で大阪市立大学医学部附属病院小児科での研究に使用させていただきます。
研究について詳しくはこちらをご覧ください→
(タップでPDFが開きます)
研究に参加したくない場合は、いつでも本研究への協力を拒否することができます。また、研究への協力を
断っても、診療に関する不利益等を受けることはありません。
【研究に関するお問い合わせは】
大阪市立大学大学院医学研究科 発達小児医学
(担当者氏名)左 信哲
電話番号:(06)6645―3816
メールアドレス:d18mb030@fa.osaka-cu.ac.jp
左先生から妊婦さん・赤ちゃんのママパパへのメッセージ
皆様、今回もアンケートへお答えいただきありがとうございました。
今回の結果からも色々と見えてきたことがありました。
まず、乳幼児への予防接種については、今回のアンケートの回答では、予防接種への印象や理解は前回の回答結果よりも向上しているようでした。
前回と今回の結果の違いの理由はわかりませんが、合わせて検討をした所、ワクチンへの理解が進むと印象が良くなる傾向が見られました。より良いワクチン接種に向けて、ワクチンの効果や意義、リスクについての理解を深めるためには、正しくわかりやすい情報を手に入れる必要がありますが、情報の入手先としては前回と同様、多くが医師や母子手帳、行政からの案内など公的なソースが選ばれています。
残念ながら、少しずつ改善を目指す動きはあるものの、そのような公的情報資源が劇的に改善され、理解を深める事につながったわけではないだろうと考えますので、やはり、今回の結果を、予防接種への意識が良くなったと単純に考えるわけにはいかないようです。
もしかしたら単純にお応えいただいた方々が、予防接種へポジティブな集団だったのかもしれません。ですが、いずれにしても、予防接種への理解を深めることが、予防接種の印象を向上し、接種にまでつながる可能性があり、そのためには、公的な情報資源たる私達医師達が、より安心した予防接種のための情報提供についてもっと積極的に考えていく必要があると考えられます。ぜひ、皆さんからも積極的に疑問点を、予防接種の際にはぶつけていただいて良いと思います。
ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンについて
お子様たちがもっと大きくなってからのワクチンなので、少しイメージしづらい部分があったかもしれませんが、多くの回答をありがとうございました。
予想通り、と言って良いかはわかりませんが、HPVワクチンについての印象は乳幼児へのワクチンに比べて良くはないようです。理解についても不足していると感じておられる方々が多いようで、定期接種ワクチンであることをはっきりとは知らない方々も多くおられました。これは積極的勧奨が差し控えられており、行政からの案内もほぼない状況では仕方がないことかもしれません。
一時期報道されたネガティブなイベントとワクチンとの関係や副反応について不安に思われる方が多く、
その不安を払拭する必要があることは間違いがないと考えられます。実際には、それらのイベントとワクチン接種との間に明確な因果関係ははっきりとは示されていないですが、それについては議論が分かれるところかも知れません。
実際にワクチン接種後に苦しまれている方々がおられることも確かなことで、
情報提供をする側としてはそれらの反応がどれくらいワクチン接種によって増えるのか、本当に関係があるのか、ないのか、果たしてワクチン接種はどれくらいメリットがあるのか、それらをわかりやすく、科学的に信頼できるデータから示す必要はあるように思います。
そして、それは積極的勧奨が差し控えられている現状では大きく進みません。
ただ、今回のアンケートからも見えるようにワクチンについての情報を欲しておられる方々はHPVワクチンについても多くおられます。様々な媒体で情報を詳しく提供しようとする働きも増えてきていますので、そのような情報ソースを利用しながら、ぜひ皆様からもより正しく、詳しい情報を求める声を上げていただくのも良いと思います。
ワクチンについて考える機会
コロナウイルス感染症が蔓延し、ワクチンへの注目はかつてないほど大きくなっています。
連日ワクチン接種の状況や各社ワクチンの違いについての報道も目にしますし、全体の流れとしてはワクチン接種へ向かう流れのように見えます。
一方では副反応やワクチンそのものへ拒否感をお持ちの方もおられるでしょう。
副反応があることは間違いありませんし、それを否定することは嘘になります。ですが、それ以上のメリットを求めて私達は予防接種を行いますし、この部分を納得して受け入れていただけるように努力する必要があると考えています。
コロナウイルスワクチンについては、mRNAワクチンという新たな手法に、遺伝子が書き換えられる、胎児へ影響がでてしまう、などの言いようのない不安を感じる方もおられると聞きます。そのような不安が事実になる可能性は、接種が始まり間もないため確実なことはまだ申し上げられませんが、少なくともワクチンが直接作用する形で生じることは、おそらくないと思われます。
とは言っても、それは詳しく説明してもらえないとわからないかも知れません。医療者側とそれを受ける側との認識のギャップを埋めることは昔からの医療の抱える課題のように思います。
何にせよ、こどものワクチンについて言えば、ワクチンに積極的であれ消極的であれ、皆が願うのはこどもたちの病気を予防すること、こどもたちが不利益を被らないことであるように感じます。その手段がワクチンを接種するか、副反応などを避けるためにワクチンを回避するかという違いに過ぎません。
私としては、もちろん予防接種がこどもたちの健康と未来を守るために必要であり重要であると考えていますが、是非、必要な情報が届けられ、皆様がワクチン接種を納得して安心して選択できるようになることを願っています。
実際にワクチン接種を行っている方々の中でも、ワクチンの情報に対するニーズは潜在的には大きいと個人的には感じますが、その求めと実際とのギャップを埋められるように私としても働きかけたいと考えています。
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